熱と時空間の問題を扱う事は、かなり厄介なことである。今日ここで紹介する作品は、未だ試行段階のものであり、1つの試行事例、或いは、1つのゲームと考えている。 それは、熱交換とその場に関するゲームである。
初期条件として、ここに温度の状態が異なる2つの音叉を用意する。 一方は室内と同じ常温に置かれ、もう一方は冷却されていた音叉である。 通常、物理振動の伝搬速度は、媒質の温度に影響されるものである。つまり、この2つの音叉は同じ温度の状態であれば同じ周波数を発するが、この温度差により一方は他方より低い周波数を発することになる。 また、この常温の音叉の周波数に等しい周波数を電気的に生成し、これを室温基準或いは、熱交換以前の室温初期条件として、室内で鳴らす事とする。
冷却された音叉は、室温との熱交換のため徐々にその温度を上げてゆき、やがて、室温との平衡状態へと達する。これに対して、常温の音叉の方には、強い光源を置き、会場内を照らすとともに熱源としても会場内に熱を放ち、その熱源との熱交換ゆえに温度を上げていく。 室内という熱交換の場としての会場と、照明という熱源に晒される音叉の周りの空間、そして室温との熱交換ゆえに徐々に平衡状態へと至ろうとするもう一方の音叉の周りの空間。この熱を回る3つの時空間が、これら3つの音源より生じる「うねり」より垣間見ることができるであろう。