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見出された光の状態:光度分布とその変動
2000 Jan-Mar : Exhibition, "Sound Art - Sound as Media" at ICC (NTT Inter Communication Center) , Tokyo

「光」という現象を考えることは、極めて興味深いことである反面、その本質を問うことは極めて困難な作業といえる。例えばそれは、物質的な媒質中を伝搬する波動振動現象とは異なり、時空間そのものの性質として、真空中をも伝搬する電磁波の一種という性質を有し[★1]、併せて、光子として局所的なエネルギーと運動量を持つ粒子の性質を有するものである。この波動性と粒子性による相補的な概念に見られるように、正にその議題は、現在も研究されつづけている大きな関心事の一つであり、その本質を考えることは、概念的な多様性を生みだすものである。そのような「光」は、また、最も日常的に体験している物理現象の一つでもある。それは、私たちが生活する場所において、空間を照らし出し、事物を識別することにおいて、視覚という知覚認識の機構上必要不可欠な要素の一つでもある。私は、この日常的で且つ概念的多様性を生みだす「光」を、照らし出された「場所」との関係の中で扱うこととした。
空間を照らし出す機能としての照明は、ある場所を一様に照らし出す目的として、或は、場所の一部のある特徴を照らし出す目的として、その場所に組み込まれた一つの機構といえる。この機構とは、正しく場所が場所として保持するために、物理的或は制度的或は認識論的な固有状態として、常にその「場所」という時空間の領域に作用し続ける下部構造といえる。このような機構の一つとしての照明、それは、視覚的に空間を認知するための有効な情報を主に与える。まして、その場所に与えられた機能を考慮するなら、その場所に参入する私たち自身の活動にこの照らし出された空間は大きく関与するものである。そして、空間を一様に照らしているかのように映るその照明も、時空間における一つの現象として省みれば、1秒間に50回からそれ以上の周期で明滅を繰り返している変動する光源といえる。しかし、この明滅を私たちは普段意識することは少ない。故に、私は「場所」そしてその「固有性」を知る大きな手がかりとして、この光源の変動とその光の分布に着目することは、非常に有効だと考える。
今回ICCという場所の固有性として、幾つかの特徴的な光の分布を見出すことができた。この作品では、その状態を物体の運動として扱う。ここで見てとれる現象は、時空間の性質として伝搬される「光」が、太陽電池という2つの異なる物性間でおこる接触電位差を利用したエネルギー交換を経て、直接スピーカーのコーン紙を動かすという力学的運動へと還元されたものである。つまり、場所の固有性として見出された光の分布とその変動が、外部からのエネルギー授与を受けることなく、そのまま物体の運動として知覚化されることを目的としている。私はこの知覚化された運動を通して、日常的に体験している光の状態とそこで照らし出される場所との関係性を、再度省みたいと考える。そこから、「光」という多様な概念が分布する一つの世界像が現れることを思い描きながら。

★1-しばしば「音」に代表される物質的波動振動現象と「光」の波動現象を混同する意見に出会うが、これらは本質的に全く異なる現象といえる。唯一近似しているものは、波動方程式の偏微分形式に見てとれる運動の周期性だけであることに注意して頂きたい。