installation
振動現象から省みる差分の構造とその概念 structure of finite difference and its concept: observation through vibration phenomena
2003 Mar. at OFFSITE Gallery, Tokyo

 ある運動を記述する場合、時間及び空間における隣り合う地点での運動の相違を測る。
これらの地点が離散的である場合、隣り合う地点が近ければ近いほどその運動をより詳細に記述することが可能となる。このような隣り合う地点の差を測ることを「差分」と呼ぶ。これは運動を非連続的な連鎖と見做す記述形式である。
 隣り合う地点との隔たりが無限に接近するならば、それは連続した変化となる。このとき運動は一つの連続体としてその全体像を描くことが可能となる。この記述形式を「微分」と呼ぶ。
 人の直観的な把握は、全体像を掴もうとする微分形式の概念で運動を理解する。しかし、無限に接近する地点というものは一つの理念でしかあり得ない。人は観測を通して運動を見ており、有限で離散的な観測点を設けなければ、客観的運動の痕跡は得られない。このような差分形式の概念は、反面全体像を描くための記述形式とは成り得ない。つまり、どちらも一つの運動を理解する上で、厳密な意味で十分な記述形式とはならない。
 差分形式と微分形式、どちらもある運動を記述するための概念と言える。そして、この二つは全く異なる概念である。一つの運動を見るということは、二つの異なる概念上得られた二種類の結果を相互補完したとき、それを一つの現象として直観的に結びつけることが容易であったからだと考える方が、むしろ自然である。
 この作品では運動として振動現象を取り上げる。振動する数本の弦の上にそれぞれ異なる間隔で観測点を設けることで、差分の構造とその概念=記述形式を見るものである。もし、これを弦の振動という全体像=微分の記述形式として鑑みないならば、そこには別の姿が見て取れるかもしれない。

作品構成 (オプティカルファイバー、コイル、振動子、テクストパネル、増幅器、発振器 他)
 特定の長さと張力を有する4本のオプティカルファイバー上に、それぞれ等間隔の光点が施されている。この間隔はファイバーごとに異り、これらファイバーには電磁コイルと振動子によって同じ振動が与えられる。振動周波数は、各ファイバーの横波の固有振動数と一致する範囲で変化する。この変化は事前に測定したものであり、データとしてCDに固定されたものを発振源として使用している。
 この作品は、実際の現象であるライトドットの運動と概念としてのテクストによって構成される必要があるため、テクストは作品の一部として提示されなければならない。テクストを提示する上で文字の支持体には物性を伴わないものが相応しく、ここでは文字が発光体として浮かび上がる方式を採用している。そのため作品設置の条件として、テクストとライトドットのみが視覚的効果を持つ程度の暗さを必要とする。