performance
2つの音叉と1つの正弦波発振器による:熱交換の場としての時空間の分布
1999 Mar at WENZ Gallery, Tokyo

photo by Atsushi Tominaga
時空間とは、出来事を測るための基準として絶対的である反面、出来事が生起する場としては相対的なものである。故に、観測すべき出来事を識別する際には、それに有効な輪郭を与える存在として、一方、時空間そのものを識別する際には、生起する出来事の分布範囲として、私達の前に立ち現れる。

熱は発散し様々な現象を引き起こす。そしてまた、様々な現象が熱に関与し、熱交換を通して更に複雑で予測困難な出来事を形成する。熱を交換し、様々な出来事が生起する、そのような場としての時空間もまた、熱という出来事によって分節されるものである。

熱と時空間の問題を扱う事は、かなり厄介なことである。今日ここで紹介する作品は、未だ試行段階のものであり、1つの試行事例、或いは、1つのゲームと考えている。 それは、熱交換とその場に関するゲームである。

初期条件として、ここに温度の状態が異なる2つの音叉を用意する。 一方は室内と同じ常温に置かれ、もう一方は冷却されていた音叉である。 通常、物理振動の伝搬速度は、媒質の温度に影響されるものである。つまり、この2つの音叉は同じ温度の状態であれば同じ周波数を発するが、この温度差により一方は他方より低い周波数を発することになる。 また、この常温の音叉の周波数に等しい周波数を電気的に生成し、これを室温基準或いは、熱交換以前の室温初期条件として、室内で鳴らす事とする。
冷却された音叉は、室温との熱交換のため徐々にその温度を上げてゆき、やがて、室温との平衡状態へと達する。これに対して、常温の音叉の方には、強い光源を置き、会場内を照らすとともに熱源としても会場内に熱を放ち、その熱源との熱交換ゆえに温度を上げていく。
室内という熱交換の場としての会場と、照明という熱源に晒される音叉の周りの空間、そして室温との熱交換ゆえに徐々に平衡状態へと至ろうとするもう一方の音叉の周りの空間。この熱を回る3つの時空間が、これら3つの音源より生じる「うねり」より垣間見ることができるであろう。